(4)国債とお金の関係

金融緩和とは具体的に何?

まず、政府が2013年から行っている異次元の金融緩和の中身について明らかにしたいと思います。結論から言うと、それは民間銀行が持っている国債を買い上げて、民間銀行にその代金を渡しているのです。日銀による民間銀行への代金支払いは、マネタリーベースの説明で出てきた日銀当座預金を通じて行われています。

具体的なデータを見てみましょう。 以下は、マネタリーベースの推移です。

マネタリーベース推移
マネタリーベース急拡大の内訳は日銀当座預金

青の紙幣と赤の貨幣(コイン)の発行残高はそう変わらないのに、緑の日銀当座預金が2013年から爆上がりしているのが分かります。これは、日銀が民間銀行が保有する国債を買い上げて、その代金としてその民間銀行の日銀当座預金口座に代金を振り込んでいるためです。

2013年には100兆円くらいだった日銀当座預金残高は、2019年には400兆円くらいまで増えています。

それでは今度は国債の保有者別残高の推移を見て状況を確認してみましょう。

一番下の青い部分が日銀(中央銀行)の保有残高です。やはり、13年度から急激に増えているのが確認できます。

確かに、13年度から日本政府は国債を買ってその代金支払いのためにお金を作りまくっているのです。こうすると世の中にお金が行き渡ってインフレになるはずでした。これは言ってみれば、政府がお金を作るという行為を以下のイメージでとらえると、納得させられてしまいます。

お金発行の漠然とした古いイメージ

でも、このシリーズの「(1)お金とは・・・以外と分かっていないお金の本質」を思い出して下さい。そこでは、紙幣というのは金(ゴールド)のようなものではなく、政府が返済(正確には価値)を約束している借用書(債務証書)だという説明もできます。

また、国債はというと、これはまぎれもなく政府がお金を借りるためのものですので、借用書(債務証書)ですね。紙幣も借用書だし、国債も借用書です。金利がつくかつかないかという違いはありますが、本質的には同じ種類のものです。そう考えると、国債を買い取ってお金を発行するというのは、下の図ようなイメージで捉えられます。

政府発行のお金という証書と政府発行の国際という証書を交換

単に国債という債務証書を紙幣という債務証書と交換しているだけです。これならこんなことでインフレになるはずはないですよね。(実際インフレにはならなかったという事実を説明するには、これが妥当です。)

ところで、12年度と18年度の国債の保有者別の割合を円グラフで並べてみます。

国際の保有者の比率の変化

中央銀行(日銀)による国債の保有割合は2012年度の13%から、2018年度は43%に達し、今や最大の保有者になっています。つまり、政府の借金と言っても43%は日銀から借りているわけですね。日銀は政府の一部と言っていいと思います。連結決算が分かる方はすぐ分かると思いますが、親子間の貸し借りは、内部消去されるべきものですよね。実際これは返さないでいいお金と言えます。ですので、18年度末で国債等の発行残高が1,000兆円を超えた(実際1,126兆円あります)と言われていますが、そのうち486兆円は返さなくてもいいお金(あるいは、既に返してしまったお金と言ってもいいと思います)で、残りは640兆円だけになります。この640兆円だって、今のように現金との交換を継続してしまえばもっと減っていくのです。

もしも日本の政府が海外から借金をするためにドル建ての国債を発行していたらこうは行きません。なぜなら日本政府はドルを自由に発行する権利はないからです。でも、日本円建ての国債であれば、円を発行して国債と交換すればいいだけです。少し前までは、そんな乱暴なことをしたらインフレになって大変だと考えた人もいました。でも、そんな心配はないということを、日本が実際やって見せてしまったとのです。

これが、多くの国民を心配にさせ、未だにかなりの人が心配に思っている「国の借金」というものの正体です。

何も心配するようなものではないと言えますが、逆に今やっているような金融政策に何の効果もないことが分かったからと言って、何の問題の解決にもならないではないかと思う人もいるでしょう。

そんなことはありません。実はちゃんと方法はあるのです。しかもそれはそんなに難しい話でもなく、「なんだ。それだけか。」と思うような話です。ここで結論を一言で言ってしまうと、それは金融政策ではなく、「財政政策」です。次の章はこの話をしたいと思います。