(1)はじめに — 国の借金って?

最近は物知り顔のテレビの解説者が次のような話をしています。

①日本政府は、税金による収入を上回る支出をしてきており、赤字分を借金で埋め合わせてきた結果、借金残高は年々増加し、現在は1,000兆円を超えました。国民一人あたり約800万円であり、将来世代にも大きな負担を残すことになります。

上記は、別に池○彰さんの発言ではなく、多くの新聞や財務省のWeb(日本のお財布事情)などにも出ている内容です。大部分の方はこれを見て、「なんとかしなければ。将来世代のためにも多少の痛みは仕方ないのかもしれない。」と思われるのではないでしょうか。

でも、最近は専門家の中にも全く逆のことを言う人もいます。

②日本政府の借金(国債)は、政府から見たら借金だが、国債を買った国民は政府にお金を貸している立場。つまり、国民から見たら借金ではなく国債という「資産」を持っているのだ。これを国民の借金と呼ぶのは政府による悪質な騙しである。

これも言いたいことは分かりますよね。でも、国の借金はいつか政府が支出を切り詰めて税金を余らせて返済するか、それが無理ならもっと税金を聴取して返済しなければいけないのでは? だとしたら、やっぱり結局国民が負担させられるんでは? という風にも考えられるのではないでしょうか?

実際2019年10月には消費税率の3回目の引き上げがあり、10%になりました。やはり国民がもっと税金を負担しないといけないのでしょうか。

でも、ちょっと待って下さい。我々が中学校か高校の授業で習った話もあげておきましょう。20世紀にマクロ経済学を確立させた重要人物はケインズの理論(ケインズ経済学)からです。

③不況時には政府は財政支出を増やし公共事業で景気を回復させる。公共事業により経済活動に必要なインフラが整うだけではなく、新たな雇用が生まれる→消費が増える→国民の所得が増える→さらに消費が増えるというプラスのサイクルを生み出す

なるほど。そういえば不況の時は政府は財政支出を増やすのだと習いましたね。今の日本はまさしく不況、それなのに財政支出の削減と増税を目指しているようです。ケインズは昔の人からその理論が今もあてはまるわけではないのでは?と思う人もいるかもしれませんが、それにしても180度真逆のことをしていいんでしたっけ? ケインズは完全に誤っていたということなのでしょうか。

上記の話をよくよく考えてみると、最大のポイントは「政府の借金はいつか返さないといけないのか。」という点だと思います。もしいつか返さないといけないなら、①の通り、それはできれば早く返しておいた方がいいというのも納得がいきますし、②の考えはちょっとした騙しに見えます。また③のケインズ先生の考えに飛びつくのも危険な気がします。でも、もし政府の借金を返さないといけないというのが間違った考えだとしたら、今の日本は本来あるべき方向と真逆の方向に進んでいることになるのではないでしょうか。

ここで結論を言ってしまいます。私は日本政府はとんでもない間違いをしていると思っています。増税というのは通常インフレ対策の一つです。政府はインフレの時はインフレ対策、デフレの時はデフレ対策をやるのが当たり前だと思います。日本はこれまで長きにわたりデフレに陥っています。にもかかわらず、このデフレの時代にどういうわけかインフレ対策を打ち、結果としてデフレを悪化させてしまっているのが実態だと思います。

でも、このことに気付くまで私自身も色々な思い込みのせいで時間がかかりました。この記事では、なるべく分かりやすい言葉で一つ一つ整理しながら、真実を明らかにしていきたいと思います。是非お付き合い下さい。