(5)デフレ脱却のためには ・・・ 財政政策の話

財政政策とは?

前回詳しく見たようにいくら政府が国債を買い取って民間銀行にお金を渡しても、世の中に出回るお金は(当初の予想に反して)増えませんでした。でも、政府が世の中に出回るお金を増やす方法は残されています。政府がお金を銀行に渡したりしないで、世の中の個人や法人等に直接渡せばいいのです。

具体的には政府が公共事業を増やしてお金を「実際に」使ったり、あるいは減税を通じて政府が吸い上げるお金を減らしたりすればいいのです。これを財政政策と呼びます。

ここで金融政策と財政政策の違いについてまとめておきます。一言でいうと金融政策は日銀が行う政策で、財政政策は政府が行う政策です。

金融政策:日銀が行う政策。短期金利の目標を決めてそこに誘導したり、お金の発行量を調整したりします。

財政政策:政府が行う政策。公共事業によって支出を増やし社会のインフラを整えたり、増税や減税によって世の中に出回るお金の量を調整したりします。

話を今の日本のやるべきことに戻します。今は不況ですから、公共事業を増やす。そうすれば雇用も生まれ、そこでお金を得た人があらたな消費を行い、その需要を満たすためにまた新たな雇用が生まれる。そういう話です。これは何も新しいことではありません。ケインズ先生が100年くらい前に言っていたことです。

今の政府はなぜこれをやろうとしないのでしょうか? いえ、やろうとしないのならまだましで、180度逆のことをしています。緊縮財政で政府支出を減らし、消費増税などで世の中に出回っているお金を政府が吸い上げています。

これは背筋が寒くなる話ではないでしょうか。

一国の政府がその国の国民のレベルを超えることはないという言葉があります。(私はこの言葉を父から聞きました。) 政府が今のような緊縮財政路線を行っているということは、おそらく日本の有権者の大部分は、色々な不満はあるものの、基本的にはこの緊縮財政が正しいことだと考えているのだと思います。

しかし、今まで見てきたように、もしも日本を経済的に豊かにしたいのであれば、この考えを改めるべきときが来ています。別に今日本を豊かにしても将来に渡すようなツケは何も残りません。

実は、私個人も経済というのは基本的には民間が作っていくべきものだと考えており、政府になんでも解決してもらおうという考えは好きではありません。しかしながら、今のこの状況は別です。政府が本来やるべきことと真逆のことをやって足を引っ張っているわけですから、それをやめさせて、きちんとした方向に行けば、日本経済は今よりずっとよくなるでしょう。